1周年記念フリー小説 『相合傘 1』
時野光希 様2006/1/17






相合傘 1


西暦1995年、季節は夏・・・6月中頃の梅雨の時期であった。
ここ、夢が丘中学校では、六時間目の授業が行われていた。
1年3組の教室では、国語の授業をしていた。
窓際の一番後ろに座っている生徒・・・山口 大介は、今の授業をつまらなそうにしていた。
(はぁ・・・かったりーなー。俺、国語の授業は嫌いなんだよな〜・・・元々文系じゃなくて理系だしな。
国語の授業が好きだという奴が居たら、どこが良いのか聞きてぇぐらいだ。)
っと思いながら、今の授業をあまり聞かず、ノートも取らずにいたのであった。
その時、大介はふいに外の方を向いた。
(ん?天気がわりぃな・・・今にも雨が降りそうだぜ。そういや〜、天気予報で今日の降水確率は50%だって言ってたっけ。
50%だから、降る確率が低いと解っていたし、今朝は晴れてから大丈夫だと思って、傘を持って来なかったんだよな。
どーすっかな・・・・濡れて帰るしか、方法は・・・ねぇよな。)
っと心の中で呟きながら、今にも降りだしそうな空を見上げていた。

そして放課後になり、大介は鞄を持って教室から出て、下へ降りていった。
靴箱のある玄関へ着き、大介は上靴から運動靴に履き替えた。
「やっぱ降ってきやがったか・・・」と言いながら、一つため息をついた。
「じゃーねぇな、走って帰るか。」っと言って、外に走って出ようとした時・・・
「あれ?大介」
「ん?あっ・・・なつみ」
「どうしたの?傘は?」
「ねぇよ。」
「忘れたの?」
「忘れたんじゃねぇよ、最初から持ってこなかったんだよ。」
「どうして?」
「だってよ、今朝は晴れてたんだぜ?確かに天気予報じゃあ、降水確率は50%だって言ってたけどよ、こんなに晴れてんなら、
雨降る心配はいらねぇと思ったんだよ。」
「ふ〜ん。要するに、持ってくるのがめんどくさかったのね。」
「・・・まぁな。」
「それで?どうやって帰るの?」
「ん?そりゃあ走って帰るぜ。雨に濡れるけど、歩いてるよりはマシだしな。」
「ねぇ、大介」
「ん?あんだよ?」
「もうすぐ期末考査があるの、忘れてないよね?」
「忘れてねーけど。」
「期末考査が近づいてるのに、このまま濡れて帰る気?」
「風邪なんかひかねぇよ。」
「そんなのわかんないじゃないっ!」
「いいんだよ、別に。風邪ひいたなら風邪ひいたで休むから。」
「授業・・・遅れを取るよ?」
「まぁ、そりゃ取るよな。」
「・・・あんた、中間考査や期末考査が成績に響く事は解ってるよね?」
「ん。」
「だったらどうして雨が降っても風邪をひかないように、傘を持ってこないのっ!?」
「あんだよ・・・そんなの、なつみには関係ねぇだろ?」
「確かに関係ないわ。でも、なぜだか自分にとっては、あんたの事、放っておけないのよっ!」
「へっ?」
「どうしてかは・・・解らないけど・・ね。」
「なつみ・・・」
そこで、雨がさっきより少しだし激しくなってきた事に気づいたなつみ。
「あっ・・・さっきより雨がひどくなっちゃってる。」
「げっ、マジかよ!?んじゃ、俺、もう帰るから。また明日な!」
「あっ!ちょっと待ってよっ!大介っ!!」
「なんだよ?」
「風邪ひくといけないから、私の傘に・・・入りなよ。」
「えっ・・・」
「ねっ?」
「い、いいよ、別にっ」
「・・・一緒に帰ろう?大介」
「なつみ・・・」
「ねっ?いいでしょ?」
「・・・お前が俺と一緒でも構わねぇなら・・・」
「それじゃ、一緒に帰ろっ!大介」
「あ、ああ。・・・傘、俺が持つ。」
「えっ?」
「俺、お前より背が高いだろ?だから、お前が持ったら、肩が疲れちまうしな。」
「・・・じゃあ、お願いね。大介」
そして、二人はなつみの傘で、一緒に相合傘で帰ることになった。
その時、校門を出るまでに何人かの生徒が見ていた。
ある男子生徒は「水木さんの傘に入れてもらえるなんて、羨ましい奴めっ!」
ある女子生徒は「まぁ、相合傘をして帰っている人達が居るわ。」
などと、大介となつみの二人のことを見て、いろいろ言っている生徒達であった。
実はなつみは母親に似た容姿のためか、学校の男子生徒にかなり人気があり、なつみに言い寄る生徒は数知れずなのである。
大介は歩きながら、なつみに話し掛けた。
「お、おい、なつみ」
「何?」
「みんな、お前と俺を見ていろんな噂話をしてっけど・・・いいのか?」
「何が?」
「何がって・・・お前、結構男子に人気あんだろ?だから、すぐに今日の事が解っちまうんだぜ?」
「別にいいわよ。」
「別にいいってお前・・・龍一の耳にこの噂が流れてもいいのかよ?」
「えっ?龍一君に?」
「ああ。お前、龍一の事がまだ好きなんだろ?」
「・・・昔はね。」
「へっ!?む、昔はねって・・・」
「私、今は龍一君に好意は抱いていないんだ。」
「・・・マジで言ってんのか?それ。」
「うん。今は普通に友達としか思っていないけど。」
「・・・いつ、龍一への思いが変わったんだよ?」
「う〜ん・・・たぶん、星祭りの後からかな?」
「星祭りの後から?」
「うん。」
「ふ〜ん。じゃあ、お前、とっくに初恋終わってたのか。」
「えっ?」
「龍一なんだろ?お前の初恋。」
「・・・わかんない。」
「はぁ?わかんない!?」
「龍一君が本当に私の初めての恋なのかな?って・・・」
「おいおい・・・今さら何言ってんだよ?お前、小学4年生の時、龍一の事でいつもあんなに騒いでただろうが。」
「だって・・・」
「まぁ、本当はどうなのかは本人にしかわかんねぇけどな。」
「そういえばさ、大介の初恋っていつ?」
「えっ・・・俺の初恋?」
「そうよ。」
「・・・さぁな。」
「あっ、何よ、教えてくれないわけ?」
「ああ、教えられねぇな。」
「どうしてよ、教えてくれたっていいじゃないっ!それともなに?私が誰かに言うとでも思ってんの!?」
「んな事、思ってねぇよ。」
「じゃあどうして?」
「・・・俺の初恋は、まだ終わっちゃいねぇんだよ。」
「えっ・・・それって・・・まだ初恋していないって事?」
「いや、違う。俺は今まさにその初恋を・・・している最中なんだよ。」
「えっ!?そうなの!?」
「ああ。おっと、それ以上は教えられねぇぜ。」
「そっか、頑張ってね!大介」
「あ、ああ・・・(俺の初恋は・・・お前だよ、なつみ)」
「でも意外だな〜、大介の初恋がまだ続いていたなんて。」
「なんだよ、それ。意外で悪かったなっ!」
「もう、そんなに怒らなくったっていいじゃないっ!」
「けっ」
「んもうっ」
「・・・なつみ、家に寄ってくか?」
「えっ?」
「その・・・茶ぐらいなら出せるからよ・・・」
「・・・うん、わかった。じゃあ寄らせてもらうね。大介」
「お、おう。」
「あっ、ついでだから、大介にお願いがあるんだけど・・・」
「ん?なんだよ?」
「あのさ〜・・・理科、教えてくれない?」
「理科を?」
「うん。理科の授業で解らない所があって・・・」
「そっか、いいぜ。教えてやるよ。」
「ほんとっ!?ありがとうっ!」
「そのかわり、俺も英語で解んねぇとこがあるから、教えてくれよ。」
「うん、いいよ。」
っと言いながら、大介となつみは、いまだに雨が止まない中、仲良く相合傘で大介の家へと向かうのであった。






時空を越えての時野様より、1周年記念フリー小説をいただいて参りました☆

スッテキですね〜 (゚∀゚)
何かものすっごく情景を想像しちゃいました。

大介の初恋は現在進行形なのですね〜
ガンバレ大介!キミの恋は必ず実る! ☆-ヽ(o´д`)八(´д`o)ノ"

周りの目を気にする大介と、全く気にしないなつみ。
中学生の頃って、相合傘ってものすごく目立つことですよね?
そんなこともサラッとやってのけてしまうフタリが大好きです♪

素敵な小説をありがとうございました〜


こちらの相合傘、太平×ジュリエッタ版もあるそうで、
珍しいカップリングなのでこちらもいただいてきてしまいました〜



太平×ジュリエッタ版はこちらから






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