相互リンク記念
帽子屋と三月兎のお茶会
ダリア 様 (2006/10/31)






ギロロと夏美のティータイム


日向家の台所から香ばしい焼き菓子の香りが漂っている。
出来上がったばかりの焼き菓子・スコーンを夏美は嬉しそうに見る。そして、真っ白のポット(すでに温めておいた)にとっておきの紅茶の葉を入れる。先に温めておいたポットに熱い湯を注ぐのがポイントだったかな。うろ覚えの知識のままに夏美は砂時計を引っくり返した。
「そして、十分に蒸らす」
焼きたてのお菓子(特に甘くないお菓子をセレクトした)とおいしい紅茶。
"あいつは喜んでくれるかな"
夏美の口元に浮かぶのは優しい笑み。


宇宙的片想いからギロロ伍長は前進していた。奇跡的に思いを交わすことができたのだ。そう、今のギロロ伍長と夏美嬢は宇宙的両想いと言ってもいいだろう。


ギロロはその大きな目をぱちくりさせて、スコーン(夏美お手製の焼き菓子)を見た。いつも夏美が作るクッキーと比較すると、そのサイズはずっと大きい。焼きたてのためか、ほんのりと温かかった。
「大きいクッキーだな」
「ふふっ。これはスコーンよ、あんまり甘くないから。あんたも気に入るんじゃない?」
二人っきりのティータイム。(邪魔者いない)
真っ白のティーカップに飴色の紅茶がよく映える。(夏美が手ずから淹れてくれた)
加えて、夏美お手製の菓子。(己の嗜好に合わせた焼き菓子)
目の前では、夏美がにっこりと微笑んでいる。(その笑顔が眩し過ぎる)
しかも、その笑顔はギロロだけに向けられているのだ。
"今の俺は最高に幸せだ!!"
はっ、ギロロは慌てて周囲を見渡す。
人の気配、監視カメラの類の気配を探る・・・が、特に異常はない。
もっとも、ギロロが認識できる監視カメラの類は固定監視カメラではなく移動式のそれ、である。さすがのギロロも固定されている監視カメラを把握することはできない。
「どうかしたの?」
夏美が不思議そうにいきなり周囲を警戒、探索し始めたギロロを見やる。
「い・・・いや。なんでもない」
ギロロはぎごちなく夏美に微笑み、ティーカップを手に取った。
"いや、何かといえば邪魔が入るので、ついつい"
というか、あまりに自分に都合のいい状況なので疑いを持ってしまったのだ。
今までの経験則とはいえ、ギロロはあまりにも邪魔が入る状況、不幸な状況に慣れきってしまっていた。
「ギロロは蜂蜜はいらないよね?」
「あ、ああ」
夏美はスコーンを横に半分に割ると、蜂蜜をかけた。ギロロにあわせて作ったので夏美には甘みが足りなかったのだろう。
「すまんな。俺に合わせたせいで」
「え?違うのよ。このお菓子はこーいう食べ方をするの。蜂蜜の代わりにジャムを塗ったりとか」
「ほぉ?」
「ギロロはそのままのほうがいいかな、と思うけど」
「そうだな。俺はこのままでいい」
ギロロはパクリ、とそれをかじる。外はこんがり、中はしっとりとした食感。紅茶に合うというのも分かる。ふと、夏美の口の端にお菓子のかけらが付いているのが目に止まった。
ギロロはかすかに笑って、スッと手を伸ばす。
「え?」
「ああ。付いていたぞ」
平然とギロロは夏美の口の端に付いていたお菓子のかけらを取ると、それを自分の口にする。夏美は眼を丸くし、ぱくぱくと口を開け閉めした。
かあぁぁぁ、と夏美の頬が赤くなる。
「ん?どうした、夏美?」
真っ赤になった夏美にギロロは訳も分からず、小首を傾げた。
そのとき、お菓子の香りにつられたのかケロロとタママがリビングに入った。
「ナッチー、いいにおいですぅ」
「夏美殿、我輩たちにもお菓子ちょーだい、であります」
ケロロ達に赤くなった顔を見られたくなく、夏美はあたふたと両手で頬を押さえる。だが、それで真っ赤に染まった顔をごまかせる筈もない。
「ナッチー、顔、真っ赤ですぅ」
「ゲロゲロリ。真昼間っから若い娘さんを赤面させるとは・・・どんな悪戯(いたずら)したでありますか、ギロロ伍長〜?」
「な、・・・何を言っとるんだ!!いいから菓子を貰って向こうへ行け!!シッシッ!!」
ケロロの親父くさいからかいにギロロは赤面する。邪険に二人を追い払った。
追い払うにあたって菓子を持って行かせるのは、そのほうが面倒がないと判断しているのか、単に優しいだけなのか。少々判断に困るところである。おそらく、菓子を渡せば、タママが大人しく退くと踏んでいるのだろう。
「ケチ臭いであります〜」
「あちちですぅ〜」
「ね、夏美殿。って夏美殿?」
いまだ赤面している夏美にケロロは首をかしげる。
いつもと違う反応だ。
大概、照れ屋の赤だるまが赤面するのが普通なのに。
パカン。
リビングの床が間抜けな音と共に空けられ、椅子に座ったままのクルルが現れた。
日向家には家主の知らないギミック満載だったりする。もっとも、このギミックは家主どころかケロロ小隊(クルル除く)すら全てを把握していないのだから始末におえない。
そのクルルは椅子に座ったまま片肘をついて、にやりと笑う。
「クーックック。文化の違いってやつじゃ、ね?」
「また、このややっこしいときに、ややっこしい奴が」
ギロロがため息とともにクルルを見やる。ケロロ小隊の出歯亀行為も大概、慣れきってしまった。それも、どーかと思うが。
「大体、先輩のせいだぜぇ」
「どーいう意味だ、クルル?」
「ペコポンじゃどうか知らねーが。ケロンじゃ、あれはちっさいガキか幼い弟妹にする行為だからよぉ」
一気に夏美から熱が冷めた。それは、まるで冷水を頭からかけられたような衝撃すら伴っていた。
"つまり、私はギロロに子ども扱いされているってこと!?"
「・・・ギロロの馬鹿!!」
夏美はパッと立ち上がると、凄まじい勢いで自室へと戻ってしまった。
展開についていけずケロロとタママは呆然と夏美を見送ってしまう。
「な、なんだったでありますか?」
「分からないですぅ。って、伍長さん!?」
タママが仰天してギロロに声をかけたが・・・おそらく、聞こえていないのであろう。
夏美の"ギロロの馬鹿!!"発言にとっくに真っ白に固まってしまったギロロには。
「・・・真っ白でありますな」
「燃え尽きちゃっているですぅ」
「燃え尽きるというより、固まってんだろ、これ?」
薄情なのか、はたまた客観的なのかケロロ小隊の面々は真っ白に座り込んでいるギロロに勝手なコメントを付けていた。
そして、しばらくたっても固まったままのギロロにさすがに青くなり、急遽、対策本部を打ち立てることになったのは、それから、まもなくのことであった。


ここは夏美の自室である。女の子らしく沢山のぬいぐるみが飾られ、趣味のラジオのためであろうか、性能のいいコンポが置かれている。
夏美は泣きそうな表情でお気に入りのくまのぬいぐるみを抱えベットに座っていた。
こんこん。
ゆるくノックがなされる。ノックにゆるいという表現が適当かどうかはさておき、その音はそう表現するのがもっとも適当であった。そして、そのノックの主はクルル曹長その人である。
「入るぜぇ、日向夏美」
「・・・・・」
返事をしない夏美を予測していたのか、別段困る風でもなくクルルはあっさりとドアを開き部屋へ入った。もともと、日本の部屋は鍵がかかるタイプは少ないのだ。
「入っていいなんて言ってないわ」
「入るな、とも言わなかったじゃねーか」
ようやく口をきいた夏美は、どこか拗ねたような口調でクルルを責める。だが、相手が悪かった。そういう常識的なマナーに囚われるタイプではないのだ、このクルルという男は。
もっとも、褒めているわけでは決してないのだけれど。
「全く、何が気にいらねぇのかねぇ?」
ドアを閉め、そのドアに寄りかかるようにクルルは言った。どこか斜に構えた風である。
夏美はクルルと目を合わせない。くまのぬいぐるみを抱え目を伏せている。あまりに彼女らしくない態度である。
「ちっさいガキか幼い弟妹にする行為だが、誰に対してもやるわけじゃねーぜ」
ぴくり、と夏美の肩が動いた。だが、その視線は未だ伏せられたままだ。
「よっぽど気に入った相手か、可愛がっている相手にしかしねぇもんだ」
どこか笑いを含めてクルルは夏美を見やった。
「機嫌は直ったか?」
夏美の伏せられた面(おもて)が上げられ、まっすぐにクルルを見据える。
「・・・一応、お礼を言っておくわ。ありがとう」
「クーックック。そんなもん不要だぜぇ。先輩とあんたをからかうにゃ、喧嘩されてちゃ面白くねーだけだよぉ」
「あんたって本当に嫌な奴ね」
「褒めるなよ、照れるぜぇ」
"こいつの感性だけは絶対に分からない"
夏美はそう思いつつ、リビングへと急いだ。おそらくは、あのまま真っ白になって固まっているであろう恋人の元へ。



<後書き>
すみません!!朝比奈さま。
素敵なシチュエーションを頂いたのに、出来たSSはやたら曹長が出張っているし。
伍長と夏美嬢はあんまりお話していないし。
このSSのために紅茶やスコーンのデータを探したり。あ、ここでのスコーンはイギリス風のスコーンです。バターをたっぷり使って紅茶に良く合う方です。アメリカ版のスコーンは味が異なるそうですね。あっちはショートニングを使用しているとか。
私はイギリス版スコーンしか食べたことがないものですから。
って、本編とあまり関係ない資料を探したりするから、なおさらに完成が遅くなったわけなのですが。
よろしかったら、どうぞお受け取りください。
そして、今後もこのサイトをよろしくお願いいたします。




アップが大変遅くなりまして、本当に申し訳ありません。。。
もういただいたときから 宇宙の果てまでブっ飛びそうなほどに有頂天でございました…


相互リンク記念ということでリクさせていただいたのですが、スゴイ、のひと言です。
自分にはダリア様のように 積極的な伍長とか可愛らしい夏美を書くことができないので、羨ましいです!

クルルが出張っていると仰られてますが、自分の中でもクルルは 
一番オイシイところを悪意を持って持っていく というようなイメージだったりしますので、今回のダリア様のクルル、かなり好きな役だったりしますー♪

スコーンというのもいいですよね。
個人的にスコーンって大好きですし、時々買ったりします。昔はちゃんと強力粉で焼いたりもしてました☆
やっぱりイギリス式のスコーンでしたよ^^


何だかもう、ウチのようなへタレサイトと相互リンクさせていただくだけでも 詐欺のような行為なのに、その上厚かましくもステキな小説までいただけるなんて、自分ばっかりオイシイような… (;´Д`)

宝物にさせていただきます☆
ありがとうございましたッ m(_ _)m

(こちらからの小説は、い、今しばらくお待ちくださいネ。。。えぇ、忘れてはいないのです…)






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